「…翔くん、今日の17時なんだけど」


そう実香子からの連絡があったのは午前中の仕事の時。


「え、今日?」

「うん」


つか、なんでよりによって今日なんだよ。と思いながら息を軽く吐き捨てた。

よりによって28日。


「ごめん、違う日に出来ねぇか?」

「出来れば今日がいいんだけど、なんか予定あった?」

「あー…、なんとかするわ。場所どこ――…」


実香子と電話を切った後、視線を捉えた蓮斗に必然的に足を進める。


「蓮斗?」

「うん?」

「実香子から電話あったんだけど、やっぱり行ってくんね?17時」

「いやいや無理だって。俺、別件で17時から仕事入ってっし」

「それなんとか出来ねぇの?」

「出来るわけねぇだろ。お前のその用事をなんとかしろや」

「俺も出来ねぇわ」

「お前、夜の仕事まで時間あんだろうが」

「いや、今日はマジで無理」


ほんとに無理。

よりによって美咲が来る日。

敢えて仕事を早く終わりにして帰ろうと思ってたのに。

悪いけど、実香子より美咲を優先する。


「実香子に無理っつっとけよ」

「今日がいいってさ」

「んな事言われても行けねぇもんは行けねぇだろうがよ」

「…ってなると、仕方ねぇか」


手に持っていたスマホの履歴から名前を探り出す。

そこから出て来た名前に俺は迷わずコールをした。


「…はい」


数秒経って途切れた電話口から流星の声が聞こえる。


「あのさ、ちょっと頼みてぇことがあんだけどよ、」

「なに?」

「今日の17時。行ってほしいところがある」

「はぁ?なにそのめんどくせぇ頼み事」

「悪い。俺、忙しくて無理だから。場所は――…」


ホントにめんどくさそうに聞く流星に取り合えず用件を伝えて電話切ると、隣の蓮斗の視線とぶつかる。