「どうする?ベッド行く?」

「行かないよ。バイト遅れる」


速攻返してきた美咲の言葉に、俺はクスクス笑みを漏らす。


「やっぱり俺よりバイトね、」


美咲の身体を離し、美咲を見つめると、困ったように頬を緩ませた。

これ以上、居ると俺も遅刻をするため、マンションを出て美咲をバイト先まで送る。


そのまま俺は店に向かい、バックヤードに向かう。

そこの冷蔵庫から水を取り出し、いっきに喉に流し込んだ。


「楓さん、はよーっす」

「…はよ」


眠そうに顔を出したアキは欠伸をしながら冷蔵庫を開ける。

そこから取り出したお茶を口に含みながら、「あ、」と小さく俺を見て呟いた。


「なに?」

「そーそー、さっき社長が顔だしててさぁー、売上伸ばせって言ってた」

「なにそれ」

「なんか、もっと同伴とアフターを強化しろって」

「これ以上するつもりもねぇんだけど」

「さすがっすね」

「はい?」

「何もしなくてもNO1を保ってるってやつっすか」

「いや、そう言うんじゃねぇんだけど…」


何もしないでNO1になれるわけでもない。

それなりに俺も頑張ってきた。

だからと言ってNO1になる為にホストになった訳でもない。


NO1から落ちないために維持してるのは、そうまさに今、目の前を通り過ぎて行ったこの男。

俺の前を通り過ぎたかと思えば、一旦後ろを振り返って、ルイは嫌味ったらしく頬を緩めた。


「楓さん、最近本気出してます?」

「は?」


そのいちいち癇に障る言い方に俺は眉を寄せる。


「そんなんじゃ俺に抜かされるのも時間の問題っすね」


フッと鼻で笑ったルイは俺に背を向けて歩き出す。

その背後に思わず舌打ちをした俺はポケットからタバコを取り出し口に咥えた。

そう、アイツに抜かされない為に必死で頑張ってきた1位にすぎない。

ムカつく反面、アイツには抜かされたくない。

だから俺の変なプライドがやけにムカついた。