「…みぃちゃん、送る」

「うん」


小さく頷く美咲に背を向けて玄関に足を進める。


「また電話する――…」


そう言いながら振り返った時、美咲が抱きついてきたせいで俺の言葉が途切れた。


…え?

不意に抱き着かれた所為で一瞬、戸惑う。

と言うか、美咲からの不意打ちはマジでやめてほしい。

普段しない事を急にされると、俺の理性が保てなくなる。


「…どした?」


呟く俺に美咲は俺の胸に顔をくっつけたまま無言で首を振る。

そしてジャケットを掴んでいた美咲の腕が俺の背中に回った。


「ごめん、ちょっとだけ」

「……」

「ちょっとだけでいいから」


寂しそうな声で呟く美咲に俺は頬を緩ませ、美咲の背中と抱え込むように後頭部に手を回す。


「ちょっとだけ?俺はずっとこうしてたいよ?」

「……」

「みぃちゃん、もしかして誘ってる?」

「……」

「このままベッド行く?」

「もぉ、何言ってんの?仕事遅れちゃうよ?」


呆れた様に口を開いた美咲は俺の身体を離し、困ったように笑みを浮かべる。


「遅れてもいい。だって、みぃちゃんから誘ってきたんだろ」

「誘ってないよ。ごめん、もう大丈夫」


俺を見上げて微笑む美咲に俺の理性が保てるわけねぇだろ。

我慢してんのに不意に抱きつかれて、もう大丈夫って、なんだよ。

俺の理性を乱すだけ乱しといて、大丈夫って意味わかんねぇわ。


「俺が大丈夫じゃねぇわ」


そう言って美咲の頭を抱え込み、俺は美咲にキスをする。

久しぶりに会えば会うほど抱きしめたくなる。

そして理性が保てなくなる。

せっかく我慢して理性を保ってたのに、美咲が抱きついてきたせいで気分が乱された。


何度も唇を重ね合し、美咲の少し開いた唇の隙間から舌を入れる。

絡まりあう舌から、美咲の吐息が零れる。


だけどこれ以上溺れるわけにはいかない。


そっと唇を離し、俺は美咲を抱きしめた。