「翔くん、自分の事、言ってんの?」


桃華さんはクスクス笑って、俺を見つめる。


「そう。昔の自分に言いたい言葉。さっき墓行ってきて」

「そっか。やっと行き始めたんだ。お母さん、喜んでるね」

「だといいけど。寒いのに時間とらせてごめん」

「大丈夫だよ。毎日外で遊んでるし」

「寒いのに」

「子供は関係ないからねぇ」

「上の子2人は?」

「保育園。今から迎えに行こうと思って」

「あ、ごめん。時間大丈夫っすか?」

「うん。全然大丈夫だよ」

「じゃあ蒼真さんによろしくつっといて――…」

「…あれーっ、え?…え、楓さん?」


俺の声を遮って、不思議そうに掛けられた声に、俺と桃華さんが振り向く。

振り向いた先にはスーツを着たアキが戸惑いながら俺の傍まで来た。


「あ、おぉ。え、お前もう店行く気?」

「あ、いや。今からタケルんとこ行こうと思って」

「はぁ?またアイツかよ」

「だってアイツ休みっつーから。ところで、誰の子供っすか?」


アキは未だ不思議そうに俺から桃華さんに視線を向けて、そして子供に視線を移す。


「昔、店で働いてた時の先輩の子供」

「あー…、あ、そうなんすね」

「お前いま、変な事思ってただろ」

「あ、はい。普通に楓さんの隠し子って思ってました。さっき抱いてたし」

「あほか、」


呆れた様に呟くと隣に居る桃華さんは、アハハと声を上げて笑い出し、


「ねー、そうだよねー、翔くん隠し子とか普通に居そうだもんね」


そう言って更に笑う。


「あ、やっぱそう思います?俺も絶対いるって思ってるんすよ。今6歳なの、とかって」

「6歳って超おっきいじゃん。でもなんかほんと居てそうだよー」


クスクス笑う桃華さんと、ケラケラ笑うアキに、ため息を吐き捨て眉間に皺を寄せる。


「それだけは本当にいねぇから。ったく、お前が変な事言いだすから」

「いやいや、だって子供抱いて一緒に居たら普通そうなりますって」

「ならねーよ」

「俺、秘密出来ないんで、良かったっす。これで安心して飯行けます」

「あー、はいはい。気をつけてな」

「楓さんも行きますか?」

「行かねぇよ」

「んじゃあ、また後で」

「あぁ」


じゃあねぇーと言いながらアキは桃華さんの子供の手を握ってバイバイして行く。

そんなアキの姿に桃華さんはクスクス笑ってた。