「なに?」

「…私さ。…私、今の生活のままで十分だよ?」

「……」

「前にも言ったけど私、翔に分からないくらい助けてもらってる。何もしてないのは、私だから」


困った顔をする美咲に、俺までも困ってしまった。

何をそんなに躊躇することがある?

何をそんなに考えることがある?

それが美咲なんだと思うと、不意にどうしようもない笑みが漏れてしまう。


「俺、みぃちゃんが居るだけでいいから。だから何もしてくれなくてもいい。あんまりそう言うの深く考えんなって。…食べな」


未だしっくりこない美咲の表情。

コクンと頷きデザートに手を伸ばした。


ほんとに俺は美咲から何もしてもらうことなどない。

ただいてほしいだけ。

それだけで俺は十分。

それ以上の事は何も望まない。


食べ終わって外に出ると相変わらずの寒さに息が白くなる。

見上げる美咲と同じように空を見上げると、まんべんなく広がる星がやけに輝いていた。


「ありがと…」


ポツリと呟かれた小さな声。

空から視線を美咲に切り替え、俺はクスリと笑みを漏らした。

別に俺は何もしてねぇし。と思いながら美咲の頭を撫でる。


車に乗りこんですぐ、エンジンを掛け窓を少しだけ開けタバコを咥えた。

火を点けた瞬間、

「付けてい?」

美咲は箱の中のネックレスに視線を落とし、俺は軽く頷いた。


「あ、ちょっと待って」


持っているライターを置き、今にもネックレスに触れそうな美咲から俺は箱を奪い、それに触れる。

タバコを咥えたまま両手で、留め具を外した。


「後ろ向いて」


俺の言葉で後ろを向く美咲の首にネックレスをつける。


「ありがと。大事にする」


俺はその言葉だけで良かった。