「つか俺もしんどいっす、ここ何日か早朝に起こされてたんで」

「…俺かよ」


思い当たる節があるからこそ苦笑いで呟くと、タケルは何度か気怠そうに頷く。


「もー、すげぇ寝不足で仕事に影響がでましたわ」

「寝不足じゃなくてもお前の場合常に影響出てんだろーが」

「俺はいつでも真面目っす。…お、うまそー…」

「おぉ、食え食え」


両面、軽く焼いた肉をタケルはタレにつけて口に入れる。

ガキみてーに嬉しそうにするタケルに俺までも頬が緩んだ。

ほんと、こいつはいつも呑気だな。

ある意味羨ましいわ。


「翔さんと付き合ったら、毎日こんなうまいもん食えるんすか?」

「はい?」

「マジで、女になりたいっす」

「アホか。毎日食ってるわけねーだろ、カップ麺かコンビニ弁当だっつーの」

「…俺と同じとか意外っすね」

「お前、どんな風に俺を見てんだよ」

「例えば、白馬の王子とか」


馬鹿みたいに馬に乗る仕草までするタケルに、


「は?馬鹿じゃねーの、お前」


眉を潜めて声を出すと、タケルはほろ酔い気分でケラケラ笑い出す。

やっぱこいつは何かが違う。

いや、ただの馬鹿としか言いようがない。

そんなタケルから視線を逸らし、肉に箸をつけた。


「…あ、諒也、」


暫くして不意に聞こえたタケルの声に視線を上げる。

…諒也?


「おー、タケル。…あれ?翔さん?」


背後からの声に振り向くと、懐かしい顔の諒也が隣に立った。


「お-、諒也久しぶり。え、てかタケルの事知ってんの?」

「同じ高校ん時の一個上の先輩。どー言う知り合いなんすか?」


諒也は不思議そうに俺とタケルを交互に見つめる。


「現場仕事が一緒」

「え、マジで?タケルと翔さんが?あー、あれか…タケルがすげぇ男前居るっつってたのって翔さんの事?」

「いや、俺かどうかは分かんねぇけど…」

「そう!翔さんの事。てか、おい諒也!」


さっきまで肉とビールを食って飲んでいたタケルが、箸を置いて、横に立ち尽くす諒也を険悪な目で見上げた。