未だ戸惑ってる美咲に何故か俺までもが戸惑ってしまう。

そんな躊躇われても。

だから困った様に俺は笑みを浮かべた。

案の定、箱から取り出して蓋を開けると同時に美咲の手が止まる。


何かを考えこんでいる美咲はしばらくそこから視線を背けようとはしなかった。


「何で…」


ポツリと呟かれた美咲の声。

なんで私に…とでも言いたいのだろうか。


「受け取って」


そう言った俺にやっと美咲の顔が上がると思えば、美咲は俺を見て首を振った。


「受け取れないよ」

「何で?」

「何でって、こんな高そうなやつ受け取れない」

「全然高くねぇから」

「いや、私と翔の金銭感覚は違うから」


なんだそれ。と、思う言葉に苦笑いが漏れる。

やっぱ美咲はほかの女とは違うかった。

むしろ、逆になんで俺、断られてんだろう。と言う気持ちの方が大きかった。


「いやいや、一緒だから」

「一緒じゃないよ。てか私、貰う筋合いとかないもん」

「俺も拒否られる筋合いねぇもん」

「でも…」


まだ躊躇う美咲に思わず笑みが零れる。

どうしたらお前は俺の事、聞いてくれんだろうと、頭を悩ます。

むしろ、こんな事で悩むとかマジ今まででなかったから、どうしたらいいのか正直俺にも分かんなかった。


簡単にテンションをあげて受け取る女とは違うって事か。

そりゃそうだな。会いたいすら言わねぇんだし。


「俺、みぃちゃんに何もあげてねぇじゃん?だから、みぃちゃんの手元に何か残したいだけ」

「……」

「だから受け取って。こんなのしか出来ねぇけど」


ほんとに、ごめん。

こんな事しか出来なくて。


「…私さ、」


美咲が何かを言いかけた。

それを遮ったのは、目の前に置かれたデザートで。

それを見てた美咲の頬が緩んだのが分かった。