席に着くまで美咲はずっと辺りを見渡し、窓から盛大な夜景が広がる街に釘付けになっていた。

そんな美咲から視線を外し、俺はメニューに視線を落とす。


「ねぇ、何でここ?」


不意に聞こえた声に視線を上げると、美咲は俺の顔をジッと見つめた。


「んー…何でって言うか俺さ、今までみぃちゃんに何もしてねぇし、一緒に居る時間とかあんまねぇじゃん?食べにだってあんま連れて行ってねぇし。…だからかな」


こんな事しか俺には出来なかった。

本当ならもっと、もっと沢山一緒に居てやりたいけど。


「だから?」

「うん。みぃちゃんとの思い出増やしたいし」


ごめんな。

ほんとにこんな事しか出来なくて。

二人の思いですら何もなくて、ごめん。


そう思いながら視線をフロアに移し、店員を呼んだ。

店員を呼んで注文をする。

暫くたって、運ばれてきた料理に美咲の顔が嬉しそうに笑顔になる。


「美味しいね」

何度も言うその言葉に俺はおかしくなる。

食べるたびにその言葉を発する美咲に、思わず苦笑いが漏れた。


「みぃちゃん…」

「うん?」


食べ終わってデザートを待ってる時、俺は美咲に声を掛けると、美咲は不思議そうに首を傾げる。

分からないようにと、カバンの中へと入れていたそれ。

長細い箱を取り出して、俺は美咲の前に差し出した。


「みぃちゃんに…」


気に入るか分かんねぇけど。と、思いながら俺は頬を緩ませた。

案の定、美咲は箱をジッと見つめてから徐々に視線を俺に向ける。


「何、これ?」

「見れば分かる」


ゆっくりと美咲の手が箱に向かう。

さっさと開ければいいものの、その手はゆっくりで、思わず苦笑いが漏れる。