目的地に着き、俺は車のエンジンを切る。

フロントガラスに視線を向けると、街の夜景が輝いている。

そんな夜景を目にしながら俺は美咲に視線を送った。


隣の美咲はスヤスヤと眠っていて、起こすのが可哀相なくらいだった。

だけど、このままここでこうしてる訳にもいかなくて、俺は美咲の肩に触れる。


「…美咲?」


軽く揺すっても起きない美咲に俺は声を掛け続けた。


「みぃちゃん。みぃちゃん」


美咲の身体が動く。

俯いていた顔が徐々にあがり、美咲の瞼が重そうに開く。


「大丈夫か?」


頭を擦ってる美咲に声を掛け、俺は覗き込んだ。


「あ、ごめん」


慌てたように美咲は髪を整え、振り返る。

まだその目が重そうで、少し涙目になっている。


「やっぱ疲れてる?」


疲れ切った美咲の表情にそう声を掛けると、美咲は案の定、首を振った。


「ううん。大丈夫」

「しんどかったら言えよ」

「うん。ホント大丈夫だから」


ほんと大丈夫って言葉、好きだな。

なんて思うと思わず頬が緩む。


「みぃちゃんは無理すっからなぁー…」

「それ翔でしょ?」

「俺は無理なんかしてねぇよ。…つか、着いたから降りよ」


車から降りた瞬間、ヒヤッとした冷たい風が頬を掠める。


「寒っ」


案の定、美咲も思ったらしく小さく呟き、手で腕を擦っていた。

その空いている反対側の手を俺は握る。

握った美咲の手が物凄く冷たくて、俺はギュッと握った。


「みぃちゃんの手、冷てぇな。なんでそんな冷てぇの?」

「さぁ、なんでだろう。翔の手があったかすぎるんだよ」


頬を緩める美咲に、俺も同じくフッと頬を緩める。

にしても冷たすぎ。


「綺麗だね」


店の入り口まで続く輝かしい庭。

電球のライトが植えてある花を更に輝かしくさせ、その風景に美咲は辺りを見渡していた。

そんな美咲に、俺は視線を落とし、口角を上げた。