未だに横になって顔を上げる気配すらない美咲に俺は口を開く。


「みぃちゃん疲れてる?」

「ううん…」


そう言いながら頬を拭う仕草。

なんで泣いてんの?と、言うまでもなかった。


そう。俺は気づいていないフリをした。

そうすることが、今は美咲の為だと思ったから。


「何か食いに行こ。どうせ学校でも昼飯食ってねぇんだろ?」


白い箱を見えないように隠し、反対側の手で車のカギを見せる。


「嫌?」


視線を俺に向け、首を振る美咲に俺は口角を上げた。


「じゃあ行こ」


私服に着替えた美咲は何も言わずに俺の後を着いて来る。

そして助手席に乗った美咲の視線が俺に向くのが分かった。


「今日、夜は休みなの?」

「あぁ。最近、みぃちゃん来ねぇから寂しかった」


そう言って、俺は視線を向け、頬を緩ませた。

会っていない3週間が長かったと思う反面、体調が優れていなかったこともあり、会わずに良かったと思う複雑な自分が居る。

そしてこの期間で治まってくれた咳にホッとした。


「ごめん」


小さく呟く美咲にまた苦笑いが漏れる。


「うそうそ。俺よりお母さんの方が大事だから居てあげな」

「ってか、どっちも大事だよ」

「ホントに思ってんのかよ」

「思ってるってば」

「はいはい」


相変わらずだな。なんて思いながら俺は、そんな美咲に苦笑いが漏れる。

その後の美咲は深く背をつけてずっと窓の外を眺めてた。

何を思って、何を考えているのかわからない美咲に俺は口を開くことはなかった。


ただ気づくと、いつの間にか美咲の瞼が落ちているという事。


疲れてんだろうか。

そう思いながら俺は車を走らせた。