頬を緩めながら俺は冷蔵庫に向かい、その中から飲み物を手に取る。
紙パックのレモンティーとカフェオレ。
それを掴んで俺は後ろを振り返った。
「みぃちゃんなんか飲む?」
“温かいものが良かったら作るけど“
そう付け加えながら言って、もう一度視線を冷蔵庫に向け、一旦、手に持っていた飲み物を冷蔵庫に仕舞う。
と、その瞬間。
ギュッと抱きつかれた所為で、俺の肩が一瞬上がった。
タバコを咥えたまま両手で左右の扉を閉める。
「どした?」
そう言いながらタバコを口から離し、少しだけ後ろに視線を向ける。
そしてその視線は俺のお腹に移り、ギュッと抱え込んだ美咲の両腕に向く。
普段、美咲から抱きついて来ることはまずない。
むしろ今までで一回もないに等しい。
ほんとに、どした?
この会ってない3週間で何があった?
そんなことを思っていると、
「ごめん…ね」
小さく呟かれた美咲の声に息を飲み込んだ。
ほんとに小さな声。
震えているような声。
そして美咲の腕は更に俺をきつく抱きしめた。
「何かあったか?」
「心配かけてごめん…」
「……」
「ママも諒ちゃんも教えてくれた。翔が悩んでるって事、自分の所為だって思ってる事…教えてくれた」
「……」
「私、そう言うの何も考えてなかった。翔がそう言う事を思っていてくれてた事なんて…」
「……」
「だから…ごめん」
美咲の苦しそうな声が背中から伝わる。
時々、小さく震える身体。
その華奢な身体を俺は抱きしめたいと、そう思った。



