帰ってからは記憶がないくらいに眠っていた。
仕事を休んだからそんなに寝れたのであって、普段なら寝れない。
起きた頃には既に夕方になっていて、タケルとの約束を面倒だと感じる。
もうこのまま朝まで眠りたい気分だった。
そして約束をしていた夜7時を過ぎもうすぐで30分になろうとしている。
歩いて近場の最寄りの駅にある焼き肉屋。
店の中に入ると、中から肉の焼けたいい匂いが辺りを立ち込めていた。
「翔さん、おつかれーっす」
先に座っていたタケルは大きく手を振り俺を出迎える。
「お前もう酔ってんの?」
席に着いた俺は目の前でビールを飲むタケルに苦笑いする。
その少し赤らんだ顔が何倍目かを悟っていた。
「まだ酔ってないっす。てか遅いっすよ、翔さん。30分遅刻。待ちくたびれたっす」
「寝てた」
「はっ?朝の仕事休んで寝てたんすか?」
「あぁ」
「もう、俺を待たせないで下さいよ」
「お前は彼女かよ」
「おー…翔さんの女になりてー」
「はいはい。で、肉頼んだのかよ」
「まだっす」
「…あ、すみません。オーダー…」
通りすがりの店員を呼び止め、メニューに指差し注文をする。
「とりあえず、生中と、これ」
「畏まりました」
「さすが翔さん。全部特上」
店員が姿を消した後、タケルが嬉しそうに声を上げた。
つか子供かよ。
いや、こいつは本当に精神年齢が子供だけど。
「最近、肉食ってねーからなぁ。お前、飯いつもどーしてんの?」
「適当に」
「作ってんのかよ」
「そんな訳ないっす、作れねーし」
「だろーな…」
「翔さん、明日来るんすか?仕事…」
「あぁ、行くよ」
「すげー…その身体能力」
「だから最近マジでしんどいんだって」
タバコに火を点けたと同時に、ビールと肉がテーブルに置かれる。
その肉を鉄板に並べながら、ため息とともに煙を吐き出した。



