「あ、ちょっと待ってよ!じゃ、流星くんも蓮斗くんもまたね」
「気をつけて」
「お疲れっす」
沙世さんの焦った声の後、流星と蓮斗の声が聞こえる。
カツカツとヒールの音を響かせながら、俺の隣に来た沙世さんは、「もぉ」とだけ呟いた。
「沙世さん、こんな時間でも元気っすね。歳なのに」
「ちょっ、なによそれ!歳は関係ないでしょ?」
「いやー…マジですげぇなって思って。俺、眠くて仕方ねぇもん」
「そんなの朝も仕事してるからでしょ。辞めればいいでしょ」
「うーん…なんつーのかな、楽だから辞めらんねぇのかも」
「楽?あの仕事のどこが楽なのよ。体力仕事じゃない。夜のほうが断然楽でしょ」
「朝は気疲れしねーからな」
俺にとっちゃ、唯一そこが楽だった。
夜と違って誰に対しても媚びうることなく、居れる場所。
「翔くんさ、昔より悩みの種、大きくなってない?」
沙世さんは俺の顔を覗き込みフッと笑った。
「昔っから悩んでっけどな」
「そお?昔はそんな感じじゃなかったでしょ?悩みなんて言わなかったでしょ?」
「そっかな?」
「そうだよ。今じゃ疲れたって口にする事、多い」
「そんなこともねぇけど」
小さく呟き、ため息を吐き出す。
沙世さんの車につき、助手席に座った時、沙世さんが俺を身構えた。
「罪悪感でも感じてんの?…彼女に」
フフっと笑った沙世さんから俺は視線を外し窓の外を見つめる。
エンジンを掛けた沙世さんは、ゆっくりと車を動かした。



