「やっぱり、数値高いじゃないの」

「ちょっとだけな」

「これのどこがちょっとなのよ」


沙世さんは顔を顰めながらジッと手元の紙をみつめた。


「薬飲んだら治るっつってたよ」

「そう言う問題じゃないでしょ。仕事意外はお酒禁止してるわよね?」

「してる」

「ほんとかしら。ご飯食べたの?」


相変わらずお節介の沙世さんに俺は無意識に笑みをこぼしていた。


「相変わらずですね、沙世さんは」


クスクス笑みを漏らしながら一本のタバコを咥えた瞬間、


「ちょ、ちょっと!」


沙世さんの焦った声とともに、タバコに向かって手が伸びてきた。


「もぉ、何してるのよ」


そう言いながら俺のタバコを取り、顔を顰めたまま箱に戻す。


「そこまでしなくてもよくね?」

「ダメよ。しばらく辞めなさい。彼女が心配するわよ」


クスリと笑った沙世さんに思わずため息を吐き出してしまった。


「彼女っつっても最近会ってねぇからな」

「あら。もしかして翔くんの仕事に愛想つかされたの?それか酒癖が悪いからかしら?」


面白がって笑う沙世さんに俺は顔を顰めた。


「そんなんじゃねぇよ」

「あら。そうなの?もう監禁やめたんだ」

「監禁じゃねーよ。母親んとこ戻って行っただけ」

「あー、そか。それが1番いいよね」

「そうだな」


俺が出来なかったこと。

ずっと母親の所にいなかった事。

ほんと、いつまでも何年経っても思い出すとあの光景が蘇る。


「はい。翔くんすき焼き食べなよ」


目の前に1人用鍋が置かれる。

コンロの上でグツグツと煮込まれる具材からの匂いが鼻に染み込んだ。