「まぁ、あれだな、お前。変な男に引っかかりそうだから気をつけろよ」

「ご心配ありがとう。大丈夫だよ、」


そう言った実香子の表情が寂しく見えたのは気のせいだろうか。

結局、流星の事など聞けなかった。

むしろ俺には関係ない事で、聞く意味もない。

聞いたところで、って感じになるに違いない。


その日の夜の仕事を終えた後、俺は沙世さんの店へと向かう。

全く行く気がなかったが、夕方から何度も掛かってくる電話にめんどくさくなって仕方なく来た。

路地裏の出入り口から入り、フロアに顔を出すと、沙世さんは俺に気づき頬を緩めた。


「来てくれたんだ」


テーブルを拭きながらそう言った沙世さんにため息を吐き、カウンターテーブルの椅子に腰掛けた。


「しつこいぐらいに電話鳴ってたから」

「だって、翔くん出ないんだもん」

「仕事中」

「何が仕事中よ。あなた仕事中でも電話に出るでしょ。で?病院行ったんでしょ?」

「あぁ」

「結果見せて」


沙世さんは右手を出し、俺の顔をジッと見つめた。


「見ても分かんねぇだろ」


そう言いながらポケットから折り畳んだ紙を差し出し、俺はカウンターへと回った。

棚からグラスをだし、冷蔵庫からビール瓶を取り出した瞬間、慌てて来た沙世さんの手が阻止する。


「ちょっと、もぉ。何してるのよ」


頬を膨らませた沙世さんがため息を吐き捨てながら、ビール瓶を冷蔵庫に仕舞う。


「だって、これしかねぇだろ」

「あっちの冷蔵庫にトマトジュースあるわよ」

「またトマトかよ」


呟きながらバックヤードにある冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、さっきいた場所に戻ると、沙世さんは俺を見てため息を吐き出した。