「しばらく辞めたら?」

「……」

むせ返る俺に実香子は顔を顰めたまま俺を見る。


「肝臓弱ってるからだよ」

「それ関係ねぇだろ。今までそんな事なかったし」

「肝臓弱ってんのにタバコの吸いすぎ。肺もやられるわよ。十分に関係あるよ」

「ねぇーって」

「じゃあ、医者になんて言われたの?」

「薬飲んだら治るっつってた」


まぁ、実香子の言った事は間違いではなかった。

数値が高いのと、更に疲労のせいか、免疫が落ちてるのに、タバコを吸う事で肺にも負担がかかり咳が出ると。

疲労っつっても、いつもと同じ。

だから正直、あんまりわからなかった。


「そんな浮かれた事言ってると、絶対いつかは入院しなくちゃいけないよ」

「そん時はよろしくなー」


入院。それはねーわ、と思いながら実香子に軽くあしらって口角をあげた。

そんな実香子は深くため息を吐き出した。


「もぉ」


と、不貞腐れたように実香子は呟くと、鞄の中から紙を取り出しそこにペンを走らせる。

書き終わった後、その紙を俺に渡してきた。


「ん?なに?」

「私の番号だよ」

「え?」

「え?って、さっき話したでしょ。私の彼氏役してねーって」

「あー…」


そんな事すら忘れていた。

実香子は頬を膨らませている。

と、思えば頬を緩めた。


「翔くん、番号教えて?」

「あれ?お前知らなかったっけ?」

「知らないけど」

「あ、そう」


呟く俺に実香子はペンを差し出す。

そのペンを取り、実香子の番号の下に俺の番号を書き、その部分を千切って実香子に渡した。


「良かった。翔くんで」

「は?なんで?」

「だって翔くん、そう言うの慣れてそうだし」

「はい?つか俺、そんなめんどくせぇ事、一度もやった事ねぇんだけど」

「めんどくさいって言わないでよ」


実香子は唇を尖らせ、俺を見つめた。


「一回だけだかんな」

「ごめんね、ありがとう。助かる」


実香子はそう言って頬を緩め、そんな実香子に軽く息を吐き出した。