「ねぇ、今からどーすんの?」
駅に向かう俺の足を追っかけるようにしてミカは着いてくる。
「どーするって、帰って寝るに決まってんだろ」
「寝るって誰と?」
「一人に決まってんだろ」
クスクス笑うミカにため息を吐く。
ほんと、コイツは…
「じゃあ、私タクシーで帰るから」
「はいよ」
「なんなら楓も一緒に来なよ」
前方に見えるタクシーに指さしながらミカはニコッとする。
「いや、もう一人になりたい気分…」
「もぅ、なんなの、それ!」
「これ以上、自分の領域に入られたくねぇの」
「ほんとそれ、よく言うよね。ホストの言う言葉じゃないでしょ…」
「悪い?」
「べっつにー…いいんじゃない?楓らしくて」
そう言ってミカが頬を緩めた。
「思うけど、俺らしいってなに?」
「んー…ベタベタしない感じ?」
「は?んだ、それ」
「店でも女にベタベタ、外でも女にベタベタは嫌い」
「それ、ただのお前の好みだろうが」
軽く笑うとミカは、何を思ったのか不敵な笑みを浮かべ、
「まぁ、でも?彼と別れたら付き合ってよ。楓の事すきだし」
「はいはい」
「じゃーね、」
適当にあしらう俺はミカに軽く手を上げ、足を進める。
この前は付き合う気ねーとか言っときながら、なんだよアイツ。
別にどーでもいいけど。
女って、マジでいいとこしか見ねぇよな。
そんな事を思いながら駅に着き、たった500円しか持ってねぇ金を見て小さくため息をつき、普段あまり乗らない電車に揺られた。



