タバコを何度か吸って現実に引き戻された気分になった。
乾いた咳が喉からむせ返るように出る。
あぁ、そうだった。と思いながら思わず小さな舌打ちが出る。
隣にある長い灰皿の筒にタバコを押しつぶし、俺は店へと戻った。
戻って走行、洗面所へと向かう。
時折、匂わせるリアの匂い。
服についたリアの匂い。
まだ唇に残るリアの感触。
それを消し去る為に、俺は水で顔を洗った。
蛇口から出る水の音。
顔を洗った所為で髪の毛から落ちる雫。
俯いてため息を吐き捨てると、背後からクスクスと笑った声が耳を掠めた。
「なに?キスでもされたのかよ」
流星の面白おかしく笑った声。
水を止めて、タオルで顔を拭く俺の顔を更に覗き込んできた。
「なんだよ、」
「だーかーらー、リアにキスされたかって聞いてんの」
「……」
「おぉ。それはされたね」
「つか邪魔」
行き場を塞がれ俺は手で流星を追い払う。
「戻ってくんの遅せぇからさ、ホテルでも行ってんのかと思ったわ」
「あのなぁ、、」
更に出てしまったため息に流星は面白おかしく笑い出す。
そして、その笑みをスッと消して、俺の肩に手を置いて、顔を覗き込んだ。
「そんなんで後5年、頑張れんのかよ」
ポンポンと肩を叩いて、この場を離れていく流星にため息すら出ない。
ほんと、流星に言われた通り、あと5年頑張れるのかわかんなくなっていた。
その日の俺は、ほとんど酒を飲まなかった。
飲まなかったというより、飲めなかったのほうが正しいのかもしれない。
飲むと必然的にタバコを吸いたくなるせいか、あまり口には出来なかった。
そんな日々が続いた一週間後、めんどくさいと思いながらも結果を聞きに病院に訪れた。



