寒い夜空の下、意味のない抱き合いに、周りの奴らの視線が時折向かう。

その視線すら邪魔でこの場から早く立ち去ろうと思った。


「寒いし風邪引くぞ」


ポンポンと背中を軽く叩いて、俺は足を進める。

その俺を追うかの様にリアのヒールの音が背後からした。

俺の腕にリアは自分の腕を絡めてくる。

周りから見れば俺たちをどんな風に思っているのだろうか。

時折、頭の中をちらつかせる美咲の存在。

そう思い浮かべることに、俺は何をしてんだろうと、思う。


タクシーを拾い、リアを見送り、店に戻る通り道の所にあるベンチに腰を下ろした。

腰を下ろしため息を吐き捨てる。

1月の夜の外はやけに寒い。

ポケットの中から手を出すと、温まっていた手が一気に冷たくなる。

そこから一緒に取り出したスマホに明かりをともした。


…美咲。

画面にうつしだされる美咲の文字。

電話をしようか一瞬ためらった。

最近会ってねぇのに加え、美咲からの電話もない。

それが美咲なんだと思いつつ、画面から美咲の名前を消し、諒也の名前をだした。


「…はい」

「諒也?」

「どーしたんすか?」

「あのさ、ずっと気になってたんだけどよ、あいつ…、美咲どーなってんの?」

「何が?」

「留学のこと」

「え、あぁ…って、何も話してねぇんすか?」

「なんも。最近会ってねぇし、つか俺には何も言わねぇよ」

「あー…そか」

「行くのか行かねぇのか分かんねぇけど、もう1月。行ってほしいとか行くなとかじゃねぇんだけど、もし行かない理由が俺であるのなら、それは違うんじゃねーのって」

「聞かねぇかも知んねぇけど、俺から話してみるわ」


そう言った諒也にクスクス笑みを漏らす。


「聞かねぇって、んだよ、」

「だってほらアイツ、俺の事は聞かねぇし」

「なんだ、お前ら、」

「まぁ、言っとくっす」

「悪りぃな」


電話を切って、ポケットに仕舞、そのまま手を胸ポケットへと伸ばす。

そこから取り出したタバコを咥え火をつけた。