案の定、リアはいい顔なんてしない。

眉間に皺を寄せたまま俺を見る。


「今日のお前、どうにかしてる」


はぁ。とため息を吐き捨て、その場から俺は立ち上がる。

なんで結婚が出てくんだよ。

そんな事、今まで一度も考えた事ねぇわ。


むしろリアを抱いたところで気持ちよくなれるわけでもない。


「お金払うから抱いてよ」


そう言いながら立ち上がったリアに俺までも眉間に皺が寄った。


「…はい?」

「いくらでも払う。楓だったらいくらでも払う」

「ってか、なんでそーなんだよ」

「好きな男に抱いてほしいって思うのは当たり前でしょ?愛のないセックスをしたって気持ちよくないもの」

「……」

「もうお店の外なんだし、私は今、楓の客じゃない」


そう言ったリアに俺は視線を外し、ため息を吐いた。


「客だよ。リアは大事な客。大事だからこそ、その領域には入らねぇよ」

「……」

「何があったか知んねぇけど、お前らしくねぇぞ」

「私らしくないって、私の事、何もしらないくせに」


フッと悲しそうに微笑んだリアは空を見上げた後、軽く息を吐いた。

それはお前だって同じだろうが。

お前だって俺の事はしらねぇだろ。


外見だけで、中身などしらない。

だからと言って、一番初めの客のリアの事は見捨てることなど出来なかった。


「お前の事は大切だよ。リアが居なかったら今の俺は確実に居ない」

「……」

「今日はもう帰れよ。酔いすぎ」


軽くハグを交わした後、リアの頭を撫でる。

だけど、そんな事をしてもリアの表情は良くなるわけでもなく、更に俺を抱きしめた。

帰れそうにねぇこの空気の場に俺は気づかれないようにため息を吐く。

今日のリアは俺より飲んでいる。

嫌な事があったのか、それはわかんねぇけど、いつものリアじゃなかった。

だからと言って、リアにしがみつく事は出来ない。

何度か背中をさすった後、俺はリアの身体を離した。