玄関を開けると暗闇が広がる。
美咲の靴がないと居ないんだとわかる。
最近はお母さんと共にすることが多く、ここへはあまり来ない。
俺にとってもそのほうがいいと分かっていても、なぜか寂しくなる時がある。
そしてまたゴホゴホ出てくる乾いた咳。
「…風邪かな」
風邪じゃないと思っていたけど、ここまでくるともう風邪と思うしかない。
そう思いながら俺は風呂に入って、速攻眠りについた。
眠る時間なんて、ほんと数時間。
けたたましくなるアラームで仕方なく起きる。
…6時30分。
眠気を覚まそうとシャワーを浴び、俺は作業着に着替えた。
いつもより身体が怠い。
眠気を吹き飛ばそうと、自販機でブラック珈琲を買い喉に流し込み、俺は迎えの蓮斗を待った。
暫くして蓮斗の車が目の前に停まる。
「…はよ」
そう言って俺は助手席に座った。
「おはよーさん」
「今日ってお前、何時まで居んの?」
「えー…17時には帰りてーんだけどな。帰れっかな?別件で依頼きてっからそっちも顔だしてーし」
「あぁ、なるほどな」
「え、なに?お前、早く帰んの?」
運転席からチラッと俺のほうに顔を向ける蓮斗。
「あ、いや、、コホン、コホン、」
言いかけで、またむせ返ってきた咳。
手に持っていた珈琲を口に含んだ。
「ってか何お前。最近、咳多くね?」
「そんなしてっか?流星にも言われた」
「そんだけしてっと言うだろ。風邪かよ」
「かもしれん」
「うつすなよ。病院行ってこいや」
「流星にも言われた」
「そりゃ言うわ」
呆れたように言葉を吐き出す蓮斗に、俺はため息を吐き出した。
正直、風邪かなんなのかはよくわからない。
喉も痛くなければ、熱もない。
ただ、身体が疲れてるだけ。
そんな調子が更に一週間続いた時だった。



