「は?やだよ。とか言うなよ。そんな事俺に言うのみいちゃんしかいねぇわ」
「それって他にも言ってるって事?」
「今まで言ったことない。今初めて。だから普通に傷ついた」
「ごめん。今から学校」
「さらっと拒否んなよ」
「あ、そうだ。ママ退院したらあたしも家に戻ろうと思う。心配なんだ…」
少し不安そうに口を開く美咲に俺は頬を緩める。
そう。美咲が一番に心配する相手は俺じゃなくて、母親。
俺はいいからお母さんと自分の事を心配すればいいのに…
「うん。そうしな」
「うん」
「あ、でもここにも来いよ」
一応、付け加えてみた。
俺の事はいいから。とは思ったものの、美咲が来ないとなれば余計に会いたくなる。
はぁ…どうしたんだか、俺。
「もちろん来るよ」
「どうだかね。みぃちゃん来ないってなったら本当に来ねぇから」
その言葉に美咲は苦笑いをする。
「これからは来るから。翔の事も心配だから」
「そう?ありがと」
「もう行くね」
「じゃあ送る」
美咲に対して何もしてやれなくて、こんな事しか出来ない事に申し訳なく感じる。
俺からしたらこの数分だけでも傍に居たいと思う事。
でも、その数分があとどれくらい一緒に居られるんだろうと、思い始めていた。
美咲が留学してしまえば、その数分も会えないという事。
その事を受け入れないといけないと分かっていながらも、本当の気持ちとの複雑さに歯がゆさが増した。



