「でも、もういいんじゃね?一人や二人くらい俺がなんとか出来るから」


俺の言葉に驚いたのか、美咲は俺の胸元から顔を離し見上げる。

さっきまでの涙は止まってるものの、赤くなった瞳が見開いた。


「一人や二人って?」

「みぃちゃんと、みぃちゃんのお母さん」

「え、何?どういう事?」

「そんな頑張んなって事。バイトだってしなくていいじゃん。あんま遅くまでされたら心配すっし」

「……」

「最近頑張りすぎ。いつもソファーで寝てるし」

「……」

「てか結構、俺って心配性かも…」


言ってすぐに苦笑いが漏れる。

密着していた身体を離し、美咲の頭を撫でると俺はそのままソファーに腰を下ろした。

乾ききった喉を潤そうと、ペットボトルの水を口に含み、軽く一息吐く。


美咲の悩んでる事は俺の身体の事だけじゃないって分かってる。

我慢して俺の仕事の事を言いたくても言えない美咲の事はなんとなく前から知っていた。

それを敢えて避けてきたのは俺。


「もう少しだけ…」


今、いい機会だから話そうと思った。

これを逃してしまうと、きっと俺は言わなくなるだろうと。

少し気を紛らわそうとタバコを口に咥え、それに火を点けた。


「…何?」

「もう少しだけ今の状態を続けさせて」

「……」

「今の…今の状態を崩したくねぇって思うのが本音」

「……」

「みぃちゃんにはあまり良くねぇって思ってるかも知んないけど俺の中での辞める踏ん切りってもんが今はついてなくて…」

「……」

「不安にさせる事、あまり一緒に居れない事、沢山あるかもしんねぇけど…もう少し、もう少しだけこの状態を保ちたい」

「……」

「ごめんな…」


申し訳なさそうに美咲を見つめると、美咲は何も言わずに首を振った。

美咲に関係ない事。そう思って今まで見て見ぬふりをしてきた。

ようやく言ったその言葉に、物凄く申し訳なさを感じた。