「で?なんでここの病院?地元じゃねぇじゃん」

「こっちで一人暮らししてるから」

「は?一人暮らし?なんで?」

「なんでって、学校がこっちだから」

「あぁ、そか。学校ね。俺とは無縁だわ」

「もぉ、何よそれ」

「ま、元気そうで良かったわ」


運ばれてきた珈琲を口に含むと、フフッと微かに実香子の笑いが耳を掠めた。


「何それ。どう言う意味よ」

「…で、あれからどうなった?ユウトと」

「やっぱりな。翔くんが私に声を掛けたのも、ここに連れて来たのもその話が聞きたかったから。…でしょ?」


苦笑い気味で口元を緩める実香子に、俺はフッと息を切らした。


「まぁ…」


気まずそうに呟いてしまった。

気になってた。とは言えずに。

別にこいつらの事で関係ない俺が首を突っ込むほどではないのだから。


「ユウトとは何もない。もう会ってないし、あの日からもう終わってる」

「そう」

「翔くん、ユウトと同じ店で働いてるんだから何で私に聞くのよ」

「そんな事、聞けっかよ」

「あの人に言われたのよ。親に認めてもらえるような男みつけろって」

「……」

「ほんと、なによそれ。この歳になって親に認めてもらえるような人って、ね。ほんと馬鹿みたい」


寂しそうに笑ったのは気のせいだろうか。

マグカップを口に運ぶ実香子から視線を外し、窓の外を見つめた。