実香子と出会ってもう一年は過ぎるだろうか。
偶然、ほんとに偶然だった。
病院で実香子の名前を呼ばれ、俺は無意識に実香子の名前を呼んでいた――…
「…実香子?」
俺を見た瞬間、実香子は一瞬驚いた表情を見せた。
だけど、その表情は緩くなり口元に笑みを浮かべた。
「…ひさ、しぶりだね。翔くん、」
「あぁ。具合悪いのか?」
「ちょっと最近体調わるくてさ。って言っても頭痛ね」
手に持っている薬を鞄の中に入れながら実香子は苦笑する。
「大丈夫かよ」
「そっちこそ。翔くんはなんで?」
「ちょっと胃痛」
「それただの飲み過ぎじゃん」
「…なぁ?ちょっと時間ある?腹減ったから付き合ってよ」
「え、うん…いいけど」
別に腹なんて減ってなかった。
ただ俺は流星が実香子を振った時から…
あの日から実香子の言った言葉が忘れられなったからだ。
“どうやったら忘れられるのかな?″
泣きながらそう言った実香子に俺は何も答えられなかった。
あの後、意味もなく流星とつかみ合いの喧嘩になって、それっきり実香子との話は口には出さなかったが。
「…なんか食う?」
「ううん。翔くん、なんか食べなよ」
メニューを見ていた俺は店員を呼んでホット珈琲を注文する。
「実香子は?」
「私もそれで。てかお腹空いてたんじゃないの?」
「俺一人食っててもな」
「いいのに別に」
クスリと笑う実香子はあの時よりずっと大人になっていた。



