「…澪?」


俺は迷う事なく近づき、そう声を掛ける。

案の定、振り返った澪は一瞬、驚いた表情をしたが、すぐに安堵の表情に変わった。

ホッとした表情が物凄く伝わってくる。


「私、この人と約束してるから」

「…は?」


男の素っ気ない言葉と同時に、″…え?″と、俺も心の中で呟く。

空気読み取ってよって言うその澪を視線を感じ取り俺はクスリと口角を上げた。


「そ、悪いけど俺が先約なんで」

「はぁ?今話してんのは俺だろうが」

「違うでしょ!アンタが急に現れただけでしょ!」

「お前が逃げっからだろうが」

「もぅ、離してよ…」


まじで何してんだよ、この女は…


「そう言ってんだから離せよ」


グッと2人の腕を掴んでお互いの手を離す。

離した瞬間、澪のため息が降り注いだ。

掴まれていた腕を擦りながら目の前の男を睨んでいる。


「もうお願いだから私の前に現れないで」


ため息交じりに吐き捨てられた言葉。

男はダルそうにジッと澪を見つめ、そんな澪は俺の腕を引いて足を進めた。


「なんかすげぇ揉めてんな」


クスクス笑いながら澪を見つめると、澪は顔を顰めた。


「お兄ちゃんには言わないでよね」

「ははっ、第一声の言葉がそれかよ」

「めんどくさくなるからね。まぁでも本気で助かった」


立ち止まった澪は俺の腕を離し笑みを作る。

そんな澪に俺は口角を上げた。


「お前、面倒くさい男と付き合うの好きだな」

「あのねぇ、面倒くさい男だと知った上で誰が付き合うのよ。付き合ってみたら面倒くさかったの」

「毎回それ言ってんな」

「うるさいわねぇ…」

「まぁ気を付けろよ。いい男を演じてる奴なんかいっぱいいっからな」

「何それ。自分の事言ってんの?」


クスクス笑う澪にフッと笑う。