「…ちょっと静かにしてくんね?」


目を瞑って、額に腕を置いたままそう呟く。


「だーから、楓さんここで寝るんすかって?」

「ちょっとだけ」

「その感じだとぜってぇ起きないっしょ?」

「起きる起きる。ちょっとだけ寝かせて」

「じゃ、俺帰りまーす」

「おい、楓。俺ももう帰っから鍵しとけよ」

「あぁ」


2人の声が遠ざかっていく。

静まり返ったこの空間の中、俺の意識が飛んだのはいうまでもなかった。


――…


「…いって、」


寝がえりを打った瞬間、背中に痛みが走る。

腕を伸ばして背中を擦ってる途中、俺の意識がハッと舞い戻る。

慌ててポケットからスマホを取り出し、明るくなったその画面を見た瞬間、


「マジか…」


思わず漏れたその言葉とため息に、身体を起した。

…6時10分。

猛烈な睡魔の所為でこの時間まで寝てしまっていた。


テーブルに置いてある店の鍵を掴んで、俺は急いで店を出て駐車場に停めていた車に乗り込んで俺はすぐに帰宅した。

あまりにもビックリした所為か眠さは一気に飛び、それどころか美咲が気になって仕方がない。


「ただいま」


リビングに入った瞬間、制服に着替えた美咲が振り返る。


「おかえり」


その少し微笑んだ美咲を見た途端、無性に抱きたくなった。

躊躇う事無く美咲の前に行き、美咲を抱きしめる。

風呂に入ったんだろうか石鹸のいい香りが鼻を掠めた。


「ごめん。あっちで寝落ちしてた」


ごめんな、みぃちゃん…

何故かこんな時にリアとのキスが頭を過った。

思い出さなくてもどうでもいい事。

ごめん…


「もう少し寝てくれば?」

「みぃちゃんと一緒に寝たい」


俺の事を気遣ってたか、美咲は心配そうな声を吐き出す美咲に俺は少しだけ頬を緩めた。


「学校あるもん」

「休めよ」

「もぉ何言ってんの?これ以上休んだらヤバいでしょ」


そう言うと思った。

それが美咲だよな。

だから再び俺はクスリと笑みを零した。