「今日はやけに酔ってんね」


フッと鼻で笑うとリアは小さくため息を吐いた。


「酔ってないわよ」

「そう?」

「…また来るわ」


スマホを見たリアがそう呟き俺に背を向ける。


「気をつけて」


背を向けたリアがヒラヒラ手を振り、その姿に軽く息を吐き捨てた。

踵を返し来た道を歩く。

ここまでしてこの仕事をしなきゃなんねぇのかなって思う時がある。

でも、俺をここまで成長させたのは紛れもなくこの業界で、それなりに楽しくやってきたけど…


「――…ちょっとそこのお兄さん?お客とキスですか?」


クスリと笑った声。

聞き覚えのある声に顔を向けると、嫌みったらしく微笑んでいる優香が居た。

見た瞬間、深いため息が零れ落ちる。


「…お前、なんでいんの?」

「ママが店オープンしたって言ってたからさ、見に来たの。パパも帰るしね」

「あ、そう」

「で?彼女居るのにキスですか?いいご身分で」

「……」

「可哀想にね、彼女」

「それ以上言うなって」


俺が一番気にしてる事。

むしろこんな所で優香と出会ってしまった事に、憂鬱勘を覚える。


「大変よねー…ホストは。なんかあの人、アンタにゾッコンじゃん。社長令嬢でしょ?」

「なんでお前が知ってんだよ」

「パパのエステサロンの常連さんよ」

「へぇー…」

「そのサロンにさ友達働いてんだけどさ、週に3、4回くるらしいよ?」

「どうでもいいわ、その情報」


馬鹿っぽくフッと笑う俺に優香は嫌みったらしく微笑み返す。

そして優香は更に俺に近づきフッと笑みを漏らし――


「シャワー浴びた方がいいんじゃない?すっごく臭いわよ、甘い匂い」


嫌みったらしく微笑む優香はそう吐き捨てる。


「ご忠告どうもありがとうございます」

「ははっ、何よ?自己嫌悪になってるわけ?ウケんだけど」

「うるせぇよ。言っとくけどお前、沙世さんとかに言うなよ」

「ママより彼女にバレないようにね。仕事とは言え、それ浮気だから。ちゃんと避けろよ馬鹿」


クスリと笑う優香に再びため息が零れた。