「マジで言ってんの、お前…」
「マジじゃなきゃ言わないよ。楓もあるでしょ?」
「ねぇよ、客はありえねぇわ…。むしろどんな展開で付き合うになんだよ」
「普通に」
「その普通が分かんねぇし」
「楓はないの?客に好意もった事」
「ねぇよ。今まで一回も」
「なんで?お嬢様とかさ、綺麗な人いっぱい来るでしょ?高嶺の花…みたいな?」
お嬢様とか綺麗な奴とか来ても所詮、俺と言う存在が目当てなだけ。
中身なんか知ろうとする奴なんて誰も居ない。
昔っからそう。
そんな奴らを好きになってもな…
「来っけど、そう言う感覚で見ねぇし。つかなんで客?」
「好きになったから」
「へぇー…何歳?」
「うーん…っと、40だったかな」
「マジかよ。つかそんないいのかよ、その男」
「うん、いいよ」
「へぇー…つかお前、何歳だっけ?」
「21だけど」
「いやいや、よく考えろよ。付き合うとかねぇわ」
「だって…好きなんだし。好きに年齢関係なくない?」
好きに理由はねぇっつーけど、そんなもんなのか?
軽く天井を見上げながらタバコの煙を吐き出す。
40歳と言う響きに一瞬、美咲が頭を過った。
「女って、オヤジ好きなんかな」
むしろ40がオヤジなのかどうかも分かんねぇし。
タバコの煙を吐き出しながら、小さく口にする俺の言葉にミカの密かに笑う声が聞こえた。
「えー…なになに?なんか意味深なんだけど」
「え?」
「俺が好きな奴もオヤジ好きって言ってるようなもんだよ?」
「いねぇし。そんな奴」
案外、鋭いところをついてくるミカに少し眉を潜めた。
だからと言って、別に美咲に好意があるとかじゃねぇけど。
ほんと俺、最近どうにかしてんな。
自分でもよく思う。
なんでアイツが頭に浮かぶのだろうか…



