「仕事帰りエステ行って今」
「おぉ。俺に会うために?」
「そうやで」
俺に視線を向けクスクス笑う夏菜に俺まで苦笑いが漏れる。
「そこで恥ずかしがんなよ。どこのエステ行ってきたん?」
「すぐそこの駅前の」
「あー…あそこね」
哲也さん開業のエステサロン。
この辺りじゃカナリ有名で殆どがそこに通う。
何店舗も経営しててこの辺りじゃそこが一番、人が多いとか。
たしか沙世さんも行ってたはず。
「明日、結婚式やから」
「え、結婚?」
「私ちゃうで」
「お前かと思ったわ」
「違うよ。そこでいい男見つけようと思って」
「そこで見つけんのかよ」
鼻でフッと笑う俺は顔を背けてタバコの煙を吐き出した。
先端にくっついている灰を灰皿に落としながら水を口に含む。
「楓、結婚式とか行った事ある?」
「あるよ。何回か行った」
「ほらそこで相手の友達の中に素敵な人?みたいな…」
「つかそれ目当てで行かねぇだろ普通」
「えー、だってそれで友達結婚したもん」
「あー…二次会とかで仲良くなんの?」
「そうそう。楓って結婚願望あるん?」
「全くない」
「じゃ、私とかどう?」
ニコッと頬を緩ませ俺を覗き込む夏菜に俺も頬を緩ませる。
「いや俺、亭主関白やからやめとき」
サラっと拒否ったつもりが夏菜は何故か嬉しそうに笑みを向ける。
「それでもいいわ。亭主関白スキやから」
「そんな好きとか言う奴なかなかいねぇだろ」
「いや、楓やったらいい。めっちゃ頑張る」
「ははっ、何を頑張んの?」
「色々。夜のご奉仕とか」
「え、ご奉仕してくれんの?」
「めっちゃする。楓寝とくだけでいいわ」
「それやったら多分俺、爆睡してるわ。そもそもお前浮気しそうやし」
「せーへんわ!一途やし。めっちゃ愛籠ってんねん」
ははっと声に出して笑う俺はタバコの火を消し、水を含む。
そしてテーブルに置かれている酒を口に含んだ。



