「あ、ところで諒也に渡してくれた?」


不意に思い出した今朝の事。


「あぁ、うん渡したよ。いっぱいだから喜んでたけど」

「そっか、ならいい」

「って言うかさ、未成年だから吸うなとかない訳?」

「だってよ、吸うなって言っても絶対吸うしよ、アイツは」

「まぁ、あながち間違ってはないと思うけど…」

「だろ?」

「うーん…かな」

「つかバイト終わったら気をつけて帰れよ」

「うん…」

「もし何かあったら電話して。すぐ迎えに行くから」

「うん。大丈夫だから」


って、また大丈夫かよ。

相変わらず俺の言葉に甘えねぇな、コイツは。

そう思うとまた苦笑いが零れる。


「大丈夫って言葉も好きだな」

「そんな言ってないし」

「言ってるよ、いつも」


困ったように笑みを漏らす美咲に俺も頬を緩ませる。


「じゃ、またね」

「あぁ」


美咲と別れた後、俺はそのまま店へと車を走らせた。

まだ開店2時間前。

一度帰宅するのは面倒くさく、いつもの場所に車を停め、店へと入る。

こんなに早く来たのは寝る為であって、特別な事は何もない。

ただ、朝からずっと眠い。

2時間しか寝てない所為か、物凄く眠い。


「おー…、楓。どした?」


ソファーに寝転んだ瞬間、奥から出て来た流星は俺を覗き込み口元に笑みを作る。


「眠いから寝に来た」

「眠いって、また朝までヤッてたのかよ」


ケラケラ声に出して笑う流星に「してねぇわ」素っ気なく返して目を瞑る。


「おい、そこで寝んなって。ギリまで寝んだったら裏のソファーで寝ろよ」

「……」

「あと一時間で他の奴らくっから邪魔」


その言葉で仕方なく立ち上がった俺はため息を吐きながら奥のバックヤードへと入り込む。

入った瞬間、窮屈なネクタイを外し、寝ころんだ瞬間、秒殺の様に目が閉じた。