「終わった?」

「あ、うん」


俺が来た事に驚く反応を見せる美咲に頬を緩ませる。


「こんにちは」


美咲の隣に居た葵ちゃんが俺に視線を向け、笑みを浮かべた。


「…ちは。元気そうだね、葵ちゃん」

「あ、はい」


良かった。

元気そうで。

むしろ美咲と仲直り出来た事に俺は嬉しかった。


「あ、なんなら葵も乗っていきなよ。送るよって言っても私が運転するわけじゃないけど…」


苦笑いをする美咲は俺に視線を向ける。

その笑みに答えるかのように俺は頬を緩め後ろに指を差す。


「いいよ。乗って行きなよ。送るから」

「あ、いや…いいです」

「えっ、何で?乗って行けばいいのに」

「うん、ありがと。でも、寄りたい所もあるし。だから大丈夫だよ」

「そっか」

「うん、じゃあね美咲」


手を振って俺にお辞儀をする葵ちゃんに口角を上げ、少し頷く。

葵ちゃんの姿が見えなくなった時、美咲は助手席へと乗り込んだ。


「ってか、どうしたの急に?ビックリするじゃん。しかもこんな所に寸止めって、目立つじゃんか。みんなに見られてるしさ」


辺りを見渡しながら言う美咲に思わず苦笑いが漏れる。

ごめん。なんも考えてなかった。


「だってここが一番わかりやすかったから」

「もぉ、また変な噂たっちゃうじゃん」

「また?また変な噂ってなに?」

「あー…」


濁すように呟いて、美咲は苦笑いをする。

だけどそのぎこちない笑みがなんとなく分かった。


「それって諒也と居っからだろうが。アイツと居たら色んな噂もたつわ」

「よくわかってるねぇ…」

「てか俺との噂されても困る事なんかなんもねぇだろ」

「そうだよねぇー…」

「そうだよねぇー…って濁った言い方すんなや」



むしろ噂されたほうがよっぽどマシだわ。

そのほうが余計な男がくっつかなくてすむ。

って、何を考えたんだ俺は。


「で、どうしたの?」

「あー…渡すものがあってさ」


後部座席に置いていたスマホ。

その紙袋を掴み、美咲の膝に置く。


「何これ?」

「スマホ」

「え、スマホ?」


案の定ビックリする美咲は紙袋の中からスマホを取り出し、じっくりと見つめてた。