降って来た雨から逃れようと俺は車に戻る。

フロントガラスにパラパラと落ちてくる雨に一息吐きながら、ワイパーを起動させた。

向かう場所は病院。

その病院を出た頃にはさっきまで降っていた雨は嘘のように上がり、処方された薬を手に俺はスマホショップへと向かう。


俺のじゃなくて美咲のスマホを買おうと思って訪れる。

別に買ってほしいと言われたわけでもない。

むしろそんな事、美咲は言わないだろう。

昨日、変えようかなと言っていた美咲を思い出し、なんとなく来た。


スマホをジッと見つめていた美咲の表情がいかにも変えたいって顔をしていたから。

ただ、それだけ。


結局どのスマホがいいのかも分からず、最新の白。

その新しい番号に俺はワンコールだけ掛け番号を残した。

時刻は15時50分。


学校が終わる時間が分からなく、俺はとりあえず美咲の学校へと向かう。

今、この時間を使わないと多分美咲と会える時間はない。


車を走らせ学校の近くまで来るとゾロゾロと生徒たちが帰って行く姿が目に映る。

もう帰ったかも知れない。

近くで車を停め、歩く人達を目で追いながら美咲を探す。


だが、一向に見つける事が出来ず俺はポケットからスマホを取り出し電話帳を開く。

そこから美咲の名前を出しかけようとした時、不意に向けたその視線の先。


正門前で葵ちゃんに手を振っている美咲を発見し、思わずクラクションを鳴らした。

案の定、美咲の視線も向くが、周りの視線も全てがこっちに向かう。


あ、悪い。と思いながら少しだけ車を発進させ、美咲の隣に停車し窓を開けた。