小石が散らばる地面をジャリジャリと音を立てながら歩いていく。

芹沢家と書かれた墓。

まだ新しく咲き誇っている花がふんわりと風に揺られて飾られてある。


きっと沙世さんと哲也さんだろう。


その花の横に先ほど買ってきた俺の花も一緒に飾る。

水をかけながら、その滴り落ちる水滴を俺はボンヤリと見つめた。


「…さみぃな、」


ポツリと零れ落ちる言葉が余計に寒さを感じさせる。

持ってきていた線香に火を点け、線香たてににたてる。

ユラユラと舞い上がる煙を見ながら俺はひと息吐いた。


「そっちで元気にやってんの?」

「……」

「俺は元気だから心配しなくていいよ」

「……」

「久しぶりにさ、哲也さんに会った。ほんとすげぇ久しぶりに…」

「……」

「お袋の葬儀以来だよ、会ったの。会社興してすげぇ人になってたけど。お袋も沙世さんの旦那認めてやれば?今更だけど…」


そう言ってクスリと俺は笑う。

哲也さんから聞かされたお袋とのエピソードを思い出し、笑みが零れる。


「ほんと良い人だな、あの人達。感謝してる」

「……」

「お袋にも感謝してるよ。ありがとう…」


初めてここに来て″ごめん″じゃなくて、″ありがとう“と伝えた。

何故かごめんって言葉を言うと、過去にとらわれそうな気がして。


そう言葉に出して伝えた時、寒さに交じってパラパラと雨が降り出してきた。

顔を顰めながら空を見上げる。

澄んだ空から落ちて来る雨。


「こんな時に会いに来んなよ、俺に…」


フッと鼻で笑い、俺は立ち上がった。

雨の日に旅立ったお袋だからこそ、雨が降ると思い出す。

まるで俺の言葉が届いたかのように冷たい雨がお袋に見えて仕方がない。