「なにそれ。バイトじゃなくて諒也の話相手でもしとけよ。どーせアイツ暇してんだからよ」


俺にとっちゃバイトよりそっちのほうが安心するわ。

だけど案の定、美咲は納得がいかない表情をしていた。


「はぁ!?余計に嫌だよ。なんで私が諒ちゃんの話相手なんかしなくちゃいけなんだよ。だからそんな暇があったらバイトしてるほうがいいの」

「あー…はいはい」


ほんと、こいつも言う事聞かねぇな。

だからと言って、俺と居るか?なんて聞いたところで居る訳でもないし、バイトを優先するだろう。

ほんっとに…


「で、渡すものって何?」

「あぁ。はい、これ」

「えっ!何これ」

「何ってタバコ」

「そんなの見れば分かるよ。だから何でこんなに入ってんの?」

「何でって吸うからだろ」

「いやいや、そうじゃなくて」

「だってアイツうっせぇんだよ。病院内、買えねぇって」

「つか、これって何日分?」

「さぁ…どれくらいだろ。半月くらいは持つんじゃねぇの?」

「って、えぇっ。諒ちゃんって1日3箱くらい吸ってんの?」

「まぁ、普通に吸うだろな。あいつヘビーだし」

「そうだよ。学校でも吸ってんだよ?学校で吸うのやめなよって言ってんのに」

「学校ねぇ…」


思わずその言葉で苦笑いが漏れる。


「バレちゃうと停学だよって言ってんのにさ」

「てかさ、みぃちゃんってそういうところ真面目だな」

「どう言うことよ?」

「いや、何もねぇー…」


必死で語る美咲に俺の苦笑いが止まることなく、何もないように首を捻る。

昔の俺も吸ってたよ?なんて言えるわけもなく、美咲を見つめた。


「思ってたけど翔もよく吸うよね?身体に悪いよ?」

「みぃちゃんはほんと心配性だなー…そんな事言う奴あんまいねぇけど」

「だって、」

「俺はだいぶん減った。1箱半か2箱くらいかな」


むしろもっと減らせねぇといけねぇけど。

酒もタバコも減らさなきゃいけねぇけど、そこは敢えて美咲には言わない。

案の定、美咲は呆れた様に顔を顰め、小さくため息をついた。


「じゃあ行くね」

「ごめん。送っていく時間ねぇわ」

「うん。大丈夫」


俺を見て微笑んだ美咲に口角を上げた。

久し振りに見る美咲の制服姿。

この姿を見せられると本当に高校生なんだと実感させられる。


靴を履いた時に乱れた髪。

その巻いていないサラサラとした髪を耳に掛け、「じゃ、行ってきます」そう言って美咲は手をヒラヒラとさせた。


「ん、いってらっしゃい。気をつけて」


美咲が出た後、同じく俺も着替えてマンションを後にした。