沙世さん達と別れた後、真っ暗闇のリビングに明かりを点ける。

首に巻かれた窮屈なネクタイを外し冷蔵庫から取り出したペットボトルの水を口に含みながらソファーに身体を預けた。

寝転んだ瞬間、やけに身体が重く、瞼が閉じていく。

こんな時間まで起きる事が最近ではなくなった所為か、起き上がる気力もなくなっていく。


次第に襲ってくる睡魔を遮ろうと、俺は仕方なく風呂場へとむかった。

シャワーを浴び、そのまま寝室へと直行する。

スヤスヤと眠っている美咲の隣で俺はすぐにでも瞼を落とした。


…2時間は寝たのだろうか。

けたたましく鳴る音で目が覚める。

6時に設定したアラームが耳の横でうるさく鳴り響き、その音でため息を吐きだす。

アラームを止めて寝がえりを打った瞬間、隣の美咲は既に居なく、俺は身体を起してベッドも上で胡坐を掻いた。

まだ辛うじて残っている睡魔。

俯きながら髪を乱暴にかき乱し、睡魔を飛ばす。


数分経ってから寝室を出ると、美咲はリビングでシャツを広げアイロンをかけていた。


「…はよ」

「あ、おはよう。朝ごはんどうする?なんか作るけど」

「いや、いらねぇわ。腹減ってねぇから」

「そっか。分かった」


まだ数時間前の沙世さんの所で食ったものが消化しきれず満腹感に至る。

そんな事より美咲はこんな朝早くから何してんだって話で。


「何してんの?」

「アイロン」

「いや、俺するから置いてて」

「大丈夫。私のもしたかったから」

「みぃちゃんの?」

「そう。学校行こうと思って」

「学校?」

「そろそろ行かないとヤバいしね。葵とも仲直りしなくちゃ…」

「え?まだ喧嘩してんのかよ」

「うーん…喧嘩って事でもないけど…。うん、ちょっと、」


ぎこちなく言って言葉を濁す美咲に俺は頬を緩めた。


「早く仲直り出来るといいな」


そう言った俺に美咲は手を止め、俺を見た瞬間、ぎこちなく笑みを漏らし首を傾げ再び手を動かした。

あの日。

葵ちゃんと会った日の事は美咲は知らず、葵ちゃんも美咲の事を気に掛けていた。

お互いがお互いに気にしてる事に俺は苦笑いが漏れた。