「哲也さんさー…浮気とかしてこなかったんすか?」

「また急に何言ってんだよ、お前は」


歩きながら、ほんと何聞いてんだよ。って思いながら俺はクスクス笑う。


「いやー…女好きそうっすもんね」

「それお前に言われたくねぇわ。毎日女に囲まれてるお前にだけは言われたくない」

「別に俺、そこまで女好きじゃないっすもん。仕事で割り切ってしてるだけっすもん」

「すげぇね。俺は無理だけど。割り切れねぇしな」

「あー…沙世さん裏切ったって事?」

「裏切ってねぇわ。そりゃ俺も男だから他の女に目移りする奴はいたけどやっぱ沙世だよ」

「すげー…、一途じゃん」

「だから言ったじゃねぇかよ。あいつが夜の仕事しだしてから、すげぇ独占欲強くなってったって。仕事終わりに迎えに何度か行ってたらウザがられたよ」

「ははっ、まじで?」

「アイツはね、若い頃は俺に好きって言ってくんなかったの。だから逆に心配だったよ。俺より5歳も離れてたしアイツも若かったから他の男も寄ってきてたしね、」

「あー…なるほどね、」


不意に過ってしまつた美咲。

そういやアイツと俺も5歳差か…

寂しいとか好きとかそんな言葉言わねぇもんな。

だからなんとなく哲也さんの気持ちが分かるような気がした。


「お前さ、今、自分と照らし合わせてただろ?」

「え?」

「上の空に入ってたぞ。沙世が言ってたけど高校生だって」

「……」

「流石に俺は監禁までしてなかったけどな」


ははっ、と笑う哲也さんにため息を吐き出す。


「だから監禁じゃねぇし。つか沙世さんマジ喋りすぎ」

「優香と嬉しそうに話してくれっからな。まぁ心配すんなよ、なんとかなるもんだよ」

「何とかねぇ…。ならない事もあるけどな」

「なんだその意味深発言。若いっていいよな、俺なんか悩むことももうねぇわ」

「……」

「でもまぁ、翔の事は今でも心配してる」

「心配される歳でもねぇよ」

「ほんとあのクソガキが大きくなりやがって」


そしてフッと鼻で笑った哲也さんは、「お前は俺の息子だよ。これからもずっと」そう言って口角を上げた。