「ほんと子のこったら。もう片付けるわよ。翔くんも朝、仕事じゃないの?」

「午前だけ」

「すげぇね、お前は。それを夜の仕事と18からずっとやっててある意味尊敬するわ」


カチッとタバコに火を点けた哲也さんが俺に視線を向け口元を緩ませる。


「ほんと凄いよねー…誰かと違って」

「はい?それ俺と比べてんの?」

「だってアナタ逃げたじゃない?」

「最終的にそこにくんのかよ」

「あーあ。百合香に感謝だわ」


フッと笑った沙世さんはお盆の上に空いたお皿を全て片付けていく。

そして沙世さんが姿を消した後、哲也さんがため息交じりで煙を吐きだした。


「俺の18歳は遊び盛りの全盛期だったからな。だから翔は立派だよ」

「その代り16まで散々な生きかたしてきたっすけどね」

「いやいや俺なんか22歳まで遊び暮れてたわ。百合香の一喝で落ち着いたけどな。百合香に言われなかったら沙世とは結婚せずにまだまだ遊び暮れてただろうなって思う」

「……」

「だから今日、百合香に会いに行って、すげぇお礼言って来たんだよ。ほんと百合香もお前も凄いよ」


思い出す様にクスクス苦笑いを浮かべる哲也さんに俺は頬を緩ませた。


「よく言われるけど何も凄い事なんかしてねぇっすよ。ただ我武者羅にここまで来ただけ」

「それが立派っつーんだよ?…さ、帰るか。こんな時間まで付き合わせて悪かったな。また帰ってきたら相手してくれ」

「ぜひ喜んで」


立ち上がる俺に哲也さんもタバコの火を消して立ち上がる。

空いた鍋を手に持った哲也さんがバックヤードに入り込んだ。


「送るから先に車行っとけってさ」


出て来た哲也さんに軽く頷いて2人で外に出る。

見上げた空に深呼吸し、伸びをした。