「で、妊娠した。って言われて、当時の俺はただ遊びたいって思うだけで″考えたい″って逃げたわけ。今思うと最低だけどな。丁度、翔の年齢ぐらいかな」

「まぁ、そうなるんすかねぇ…」


俺からすると遠い未来の話で。

全く未知の話しすぎて、分からない。


「でも俺の中で結果が全然でなくて1週間経ったときに俺の前に百合香が来たよ」

「え、お袋が?」

「そう。いつまで返事待たせんの?って。男ならちゃんと責任取って結果だしなよ。ってな」

「……」

「俺が来ないから沙世は俺と別れて一人で産んで一人で育てる。って言ってるって。高校生を馬鹿にすんじゃねぇよってタンカ切られて」

「ははっ、おもしれ。初耳だわ」

「しかも初対面でだぞ。それで俺ムカついて結婚したっつーオチな」


クスクス笑う哲也さんに俺はそのオチとやらにビックリする。


「まじっすか?」

「いや、若かったから責任とかそう言うので縛られんの嫌で逃げてただけ。だから翔はすげぇなって思うよ」

「なんもすげぇ事ねぇっすよ。俺はただ必死になって生きてるだけっすよ。哲也さんだって会社経営してるじゃないっすか。単身赴任って聞いたけど、どれくらい居るんすか?」

「あー…あと2、3年かな。企業に乗ったら帰って来る」

「え?企業に乗ったらって?」

「あぁNYで会社設立してな」

「は?マジで?エステ業界の?」

「そう」

「すげぇー…つかそもそもなんでエステ業界なんすか?」

「20歳で沙世が夜の世界に入った時、俺全然金なくてな、考えたらこのまま俺コイツのヒモになんじゃねぇの?とか思って、そん時、子育てと仕事で疲れてるアイツ見て、そう言うのつくろって思っただけ」

「まじっすか?相変わらず考え方が凄いっすね。ある意味カッケーわ」

「本当は初めから海外進出にしようって思ってたけど、どうやら俺、独占欲が強すぎて沙世から離れられなかったんだわ」

「えー…哲也さんって以外にもそんな感じだったんすか?」

「いや、いつの間にかそうなってた。あいつには勝てねぇからな」

「あー…なんか分かるわ。根性すわってますもんね、沙世さん…」


クスクス笑う哲也さんに俺もつられて笑う。

ほとんど食べ終わった後、俺は深くソファーに背をつけてタバコを咥えた。