「お前、何頼むの?」
「うーん…あんまりお腹空いてないし」
「は?じゃ、何で誘った?」
「だから目の保養にだよ」
「ふざけんな」
微笑んでペロッと舌を出したミカに深くため息を吐き捨てる。
「だって楓の調子がおかしかったから相談のろうと思って」
「相談する事も何もねぇわ。で、飲み物は?」
「アイスティー」
近くに居た店員に、アイスティーと生ビールを先に注文すると、ミカがスマホから視線を俺に向けた。
「てかさー…朝からよく飲めるよね?仕事終わった時ぐらい休めたら?」
「車じゃねぇし」
「そう言う問題?」
「そう言う問題」
そう言って取り出したタバコを口に咥えて火を点けた。
まぁ、そういう問題じゃない事は確かだけども。
酒を控えなきゃいけねーのに…
どうも俺の性格上、忘れたい事、嫌な事、消し去りたい事があると酒とタバコで紛らわそうとする。
そんな事しても消し去る事なんかできる訳ないのに。
だから時々思う。
あぁ、だからホストしてんのかって。
それで弾けて、その時だけを消し去ろうとしてる。
ホストと言うブランドをいいように扱っている。
「って言うかさぁ、楓どうやって帰るつもり?500円で」
呆れたような顔をしてボーッと見つめるミカに思わずハッとする。
タバコを咥えたまま、苦笑いが漏れ、
「タク代ねぇわ」
思い出したかのように呟いた。
「ほんとありえない。貸してあげてもいいけど」
「これ以上、貸しは作りたくねーって言うか、お前何か企みそうだかんな」
「はぁ?そんな事しないよ」
「さぁ、どうだか」
「じゃ、どうすんの?」
「電車。500円で帰れっし」
「あはは。楓が電車って、ウケる」
…うるせーよ。
そんなケラケラ笑うミカにため息を吐き捨てた。
運ばれてきたビールを一口飲み、適当に注文する。
未だにスマホを触り続けるミカに思わずため息が漏れた。
「お前さぁ、そのスマホずっと触んの止めろよ」
「だって営業メールが」
テーブルにスマホを置き、アイスティーを口に含むミカにまたため息が漏れる。



