「あら。そうなの?まぁ翔くんが高級料理を食べようが食べまいがどっちでもいいけど、大切な彼女には食べさせてあげてね」


クスリと笑って口角を上げる沙世さんに思わずタバコを咥えたまま眉間に皺が寄る。

その仕草にもう一度クスリと笑った沙世さんに舌打ちしそうになった。


「あ。もう食べていいわよ」


沙世さんがそう言ってこの場を離れると、俺はため息と同時にタバコの煙を小窓の外に向かって吐き出しタバコを灰皿に押し潰した。


てか、この鍋の量。誰がこんなに食うんだって話。

いくら普段からあまり食ってねぇとは言え、こんなに食えるかよ。


「…あ。翔くーん!サプライズ到着」


暫くして食ってる俺の耳に沙世さんの明るい声が飛んでくる。

動かしていた手を止め、俺は顔を声の方に向けた。


「わっ、なんすか?なんで居るんすか?」

「お前に会いに来た」

「は?俺は沙世さんのついでっしょ?」


クスクス笑みを浮かべる相手は沙世さんの旦那で哲也さん。

相変わらずこの人は昔っから男前で、男の俺からしても思う。


「いやいや翔に会いたいっつったの俺だしな。元気か?」


そう言いながら目の前のソファーに腰を下ろし、口元を緩ませた。


「まぁなんとか元気っすよ。久しぶりっすね、」

「えーもう何年だ?お前が高校1年の時からだから7年か、」

「そうっすね」

「もうそんなになるのか」

「お袋亡くなって7年っすから」

「だよな。あの葬儀以来だからな。今日、百合香の墓に行ってきた」

「…ありがとうございます」

「翔も行ける時は行けよ。今からでも大切にしろ」

「マザコンってくらい大切っすよ」

「ははっ、お前の口からそんな事が聞けるとはな。沙世から聞いてたけど相変わらずの男前で頑張ってるらしいな」

「男前はいいっすよ」

「あぁ。その言葉聞きなれて嫌ってか?」

「ほんと相変わらずっすね。哲也さんから言われた最後の言葉“女泣かせるな″でしたもんね」

「ははっ、俺そんな事言ったか?」

「言った言った。あの時は何言ってんだよ、この人って思ってたけど」


声に出して笑う哲也さんはビール瓶を手にしてグラスにビールを注ぐ。