沙世さんの店に着き裏口の扉を開ける。

後ろのバックヤードから内装が物凄く綺麗で、高級感が漂う。


「…わ、すげっ、」


中に入ると前の雰囲気とは全然違くて流星が言ってたとおりオシャレ感が物凄い。


「あっ、翔くん」


俺に気付いた沙世さんが奥から姿を現し、頬を緩めた。


「いいっすね、新店」

「なんか新しいとワクワクするよね」

「明日から?」

「そうだよ。少しの間は忙しくなると思うからさ、翔くんにご飯提供しなきゃって思って」

「なんだ、それ。その為に呼んだのかよ」


思わず俺はクスクス鼻で笑う。


「だってさ、もうすぐクリスマスでしょ?そしたら年末でしょ?もう会う時ないでしょー、翔くんだって忙しいと思うし」

「まぁな…」

「って事もあるし、翔くんにサプライズ」

「は?サプライズってなに?」

「もうちょっと待って。…あ、お鍋用意してるから向こうの席に座ってて」


明日から開店ともあって、荷物の段ボールがテーブルの上に置かれている。

それを目にしながら俺は言われた通り、鍋が置かれているテーブルの前に腰を下ろした。


「なー、沙世さん?」

「なにー?」

「タバコは?吸ったらダメとか?」


奥に向かって声を飛ばすと、沙世さんがグラスを抱えて姿を現す。


「いいよ。あ、一応そこの窓開けてね。寒いけど」


グラスを置いて沙世さんが指さす窓。

座ってる壁側に小さな窓がある。

その窓は後ろの席にも前の席にもあった。


「前なかったよな、窓なんか」


窓を少し開けた瞬間に冷たい風が入り込み、俺は手に持っていたタバコを咥えて火を点けた。


「ここさー、結構吸う客多いのよ。だから換気したくて窓多くしたの」

「へぇー…昔の常連多い?」

「そうねー…でも最近は夫婦で来る人も増えてるよ」

「来るっつっても社長とかだろ?どこどこの企業の取り締まり役とかじゃねぇの?」

「まぁ、そっち系の方が多いけど」

「そらそうだろ。前から思ってたけど、ここ値段高すぎ」

「あら、そう?」

「しょっちゅう来れる金額じゃねぇよな」

「よく言うわよ。あなたも一流のくせして」

「俺と沙世さんは違うんで。俺はカップラーメンで過ごしてるただの男なんで。こんな高級料理食わねぇよ」


鍋の中でグツグツに詰める野菜に、木箱に敷き詰められた肉。

ほんと、この人には適わない。