昼の仕事を終え、そしてまた夜が来る。

夜の仕事を終え帰ろうと腰をあげた時、「なぁ楓?」不意に聞こえた流星の声に顔を向けた。


「なに?」

「そういやさ、今日の昼間、沙世ママんとこ行ったんだけどな――…」

「あ、忘れてた」

「は?」

「来いって言われてたんだった」

「まぁ行って来いよ。すげぇオシャレ」

「つかよ、なんでお前が行ってんだって話」

「完成したら見せてっつってたから」


タバコを吸いながら口角を上げた流星に一息吐く。

ほんとコイツが沙世さんに会ったらロクな事がない。


「…じゃあな」


敢えて何も言わずに背を向けた俺に何故か流星はクスクス笑みを漏らした。

何に対しての笑みなのかは分からないが、その笑みにイラっとした俺は軽く舌打ちをし店を後にした。

久し振りに歩くこの路地裏。

12月の半ばにもなるとこの時間の気温は低く、スーツだけじゃ肌を震わせる。

吐く息が白く、頭に過った美咲を思い浮かべながらスマホを取り出す。


「…さすがに寝てっか」


連絡を入れようと思い取り出したスマホ。

1時半を過ぎた時間にため息を吐き、もう一度ポケットにスマホを仕舞った。


と同時に震えだすスマホ。

それをもう一度取り出して、表示を見た途端、思わず顔を顰めた。


…リア。

こんな時間になんだよ、と思いスマホを耳にあてた。


「…はい」

「楓。…今から会えない?」

「今から?」

「そう。会いたい」

「悪い。今から行くとこあっから」

「行くとこって?まさか女?」

「そう女。…母親んとこ。呼び出されたから」


沙世さんには申し訳ないが、沙世さんを利用させてもらった。

リアには伝わらないように苦笑いが漏れると、電話越しからリアのため息が漏れてきた。


「じゃあいいわ。明日行く」

「悪いな、」


電話を切って一息吐く。

女からの会いたいの電話は“寂しい″とか、″会いたかった“とか、″抱きしめてほしい″。

いつもその言葉が並べられる。

昔はその言葉を都合よく受け取って、都合よく逢っていたが、それは女が納得して安らぎを求めているだけで、決して俺には癒されることも何もなかった。


そんな連絡も今では誰一人と会いたくない。

ホストから外れると、たとえリアでも会いたくは、ない。