帰宅したのは午前一時半過ぎ。
真っ暗なリビングに明かりを点け、先にシャワーを浴び、冷蔵庫から取り出したペットボトルの水を口に含み寝室へと向かった。
布団に包まって眠る美咲の隣に横になる。
そして腕を伸ばし美咲の頭を抱え、髪を撫ぜた。
グッと抱え込む美咲の身体が俺の肌に密着する。
――…落ち着く。
なんでだろうか。今日は何故かやけに思う。
さっきまで色んな女を相手していたからだろうか。
仕事だとは言え、美咲の手前やるせない気持ちになる。
“行かないで″
そう言われた言葉が未だに頭の中に残っていて、最近では夜の仕事に出向かう時は何故かその言葉が頭の中を通過していく。
考えなくてもいい事が次々頭の中を支配していく。
職業柄そう思うのは俺だけなのだろうか、、
そう。
普通が俺には分からない。
普通に生きていなければ、普通の生活もしてこなかった俺に分かる訳がない。
そもそもその普通が分からない。
昔っからそうだった。
普通ならそうでしょ?
普通ってそうだよね?
どれくらいほかの女に言われただろうか。
女の自分都合で言われる普通。
それが全く分からなく、ホストをしていても一般常識と言う普通が俺にはよくわからなかった。
誰が決めた普通なのか、、
「…おやすみ」
何も余計な事を考えないようにと息を吐き捨て就寝の言葉を口にする。
そのまま美咲を抱えたまま、俺は目を瞑った。



