「かーえでっ、」


不意にバンっと背中を叩かれ、前かがみに倒れそうになる。


「おいっ、危ねぇだろ」


咄嗟に振り返った俺にミカはニコッと笑った。

つか、やめろよその登場パターン…

危険すぎ。


「おつかれー…」

「つかお前、髪どした?」


よく見れば金髪の髪が落ち着いたアッシュ色に変わってる所為か、いつものミカとは全く別人に思える。

派手さはマシになったものの、相変わらず化粧はバッチリな所はミカだろう。


「どう?可愛いでしょ?」

「まぁな」

「好きになった?」

「ならねぇよ」

「つか何なの、その冷たさ!…にしても何で黒スーツなの?珍しー…」


やっぱ俺イコール白。なんだろうか。

今日は何回言われたのかも分かんなかった。


「珍しくもねぇけどな」

「そう?」

「何色にも染まりたくねぇから」

「え、なにそれ」

「白は染まんだろ。その分黒はこれ以上染まんねぇし」

「はぁ?意味分かんない。今日の楓はまた変なのー…」


頬を膨らませたミカは不思議そうに俺を見つめた。


「いつもと一緒だろうが」

「違うよー…じゃあ、どこかに食べに行こっか」

「いいけど」


そう呟いて足を進める。

だけど未だに立ち止まってるミカに首を傾げながら振り返った。


「やっぱ変」

「何が」

「断ると思ったからさ」

「あー…」

「じゃあホテルにする?」


ニコッと笑みを漏らすミカに小さくため息を漏らした。


「あー…ホテルは無理。今日…いや、昨日行ったから」

「はぁ!?誰と?」


頭の中を過った美咲との出来事に、思わず口を開くと案の定ミカの大きな声が響き渡った。