「うーん…」


濁った声を吐き出す美咲は視線を上げたものの窓の外に視線を送る。


「何か食べねぇと。昼食ってねぇんだろ?」

「うん」

「じゃ尚更食わねぇと。何がい?」

「……」

「何もなかったら俺が決めるけど」

「あ。じゃなくて、帰って作ろうかなって」

「今から?」

「今からって、まだこんな時間だし」

「いや。食って帰ろ。俺、腹減って今すぐにでも食べてぇから」


不意に聞こえた美咲の微かな笑い声。


「つか何で今、笑った?笑う事、言ってねぇし」

「うん、いや…子供みたいって思った」

「は?馬鹿にしてんだろ」

「してないよ」


クスクス笑った美咲に俺も口角を上げる。

久し振りに笑った美咲の顔に内心ホッとする。


「で、何食う?」

「翔は?」

「何でもいい」

「じゃあ、お寿司」

「寿司?なぜに寿司?」

「作れないから」

「なんだそれ」


思わず笑う俺に美咲は少しだけ顔を顰める。


「もしかしてそんな気分じゃなかった?」

「じゃなくて、まさか寿司がでてくると思わんかった。イタリアンとかそっち系かと思ったから」

「あー…そっか。でも食べたい」

「わかった」


美咲に言われた通りお寿司を食べ、その後マンションに向かった。

とくに何もすることもなければ話す事もほぼなかった。

と言うよりも気づけば美咲はソファーに横たわって目を瞑っていた。


微かに聞こえるテレビからの声。

その声に耳を傾けながら俺も同じように身体を横にし、テレビに視線を向けた。