「何年も思い続けてた夢、諦めっと後悔するぞ」

「後悔なんてしないよ。今、現に後悔なんてしてないし」

「つか、後悔ってもんは後から来んの。今はそう思ってても何年かしたらその後悔が重く圧し掛かってくんだよ」

「……」

「だから、その後悔をしてほしくないからみぃちゃんに行けって言ってんの。後悔ってもんほど辛いもんは何もねぇよ」


思い出すのはお袋の存在しかなくて。

ここが美咲との思い出の場所であるまえに、お袋を思い出す場所。

俺の行動一つで死なせてしまった後悔が今でも、深く深く心をえぐる様に痛めつける。

思い出すとため息しか出ず、


「…どうしたの?」


不意に聞こえた美咲の声で我に返った。


「あ、あぁ。…うん?」

「いや、何か思いつめてる感じがしたから」

「…ここにさ、みぃちゃんと初めて来た時言ったろ?お袋の事」

「あぁ、うん」

「それが今になって物凄く後悔する。辛そうにしてたの知ってたのに何で助けなかったんだろってな。亡くなったのも俺の所為なんだなーって、ふとした時にそう思う」

「……」

「だから後悔ってもんは少しづつ膨れていって次第に大きくなってんの。後悔するならやってから後悔しろって言うじゃん。何もしないまま後悔すんのよくねぇよ」

「……」

「だから俺は、みぃちゃんに行けって言ってんの。一生会えない訳じゃねぇじゃん。いつか必ず会えるって思ってたほうが俺も頑張れるし」

「……」

「な?みぃちゃん行って来い」


美咲の頭に手を伸ばし、何度かゆっくりと撫でる。

ごめんな。

もっと早くにお前の背中を押してやるべきだった。


撫でる仕草に加え、美咲の瞳からポタポタと流れ落ちる滴。

それを隠す為か、美咲は俯いて手で自分の顔を覆った。


どれだけ悩んでたんだろうか。

それが涙となって溢れるくらい俺は妨げてたんだろうか。


…ごめん。

出会ってなければこんなに悩むこと無かったよな。

出会ってなければこんなに辛くならなかったよな。


いっぱい悩ませて、ごめん。


だからと言って、出会わなければ良かったなんて俺は思わない。