「…かも、しれない」

「え、かもしれないって何?」

「翔が優しくしたりとかすると困るの。余計に悩むの。ママ達の事もそうだけど一番、翔が私の行き場を止めてんの!」

「……」

「もう、優しくなんかしないでよ…」


美咲の張りつめた言葉が震えて響く。

俺は思わず小さく、そして深く息を吐き捨てた。

そか、俺か。

やっぱ俺か。

曖昧な態度ばかりとってたからな。


視線を隣に送ると、美咲は唇を噛みしめ、その瞳は微かに潤んでいた。

その瞳を隠そうか、顔を沈め泣きそうな声を押し殺していた。


小刻みに震える肩。

その肩に俺は触れる事無く、「…ごめん」小さく呟く。


「何で謝んのか意味分かんない」

「別にみぃちゃんを困らせようとしてた訳じゃねぇし、優しくしてるって言う実感もなかった。ただ、みぃちゃんが好きだから傍に居たかった」


ただ、それだけ。

すんなりと出てしまった言葉。

絶対に言わないでおこうと思ってた言葉が、何故か出てしまった。

でも俺は困らせようとも優しくしてたつもりも一切ない。

でもこんな中途半端な行動で美咲を困らせてたのであれば、申し訳ないと思った。


ここまで、こんなにも美咲が迷って困って、分からなくなるくらい俺がそうさせていたんだとすれば…


「誰が?」


美咲が返してきた言葉に一瞬、俺が何を吐き出して、何を言葉にしたのか分からなくなった。


「え?誰がって?」


聞き返す俺に、「うん、だから誰が好きって?」不意にカチ合った瞳。


その瞳はさっきとは違って乾ききっていた。

だけど少しだけ赤みを帯びる。

そしてその透き通った瞳が微かに揺れた。