「やっぱここに来っと落ち着くよな。…安心するっつーか」
「うん…」
「俺さ、なんつーか…深入りとかあんましたくねぇんだけどさ、でもみぃちゃんと居て思う事とか考える事とか結構あってさ、」
「…私の事とかって何?」
淡々と話していく俺に対して、少し戸惑うような美咲の声。
ここ暫く一緒に住んでたにも関わらず、お互い何も干渉しないまま過ごしてた。
仕事で同伴することも、アフターに行くことも、そこに時間をつぎ込んで美咲との時間を削っても、美咲は何も言わず、俺もその事について何も言わなかった。
もちろん美咲は俺に対して不満は沢山あったのかも知れないけど、俺は美咲に対して何も言わなく過ごしてきた。
だから、ここに来てこんなふうに口を開く俺に戸惑いを見せるのも無理はないだろう。
「うん。まぁ手っ取り早く言うと。…はい」
ポケットの中に納めていた通帳を取り出し、俺は美咲へと手渡す。
案の定、美咲は停止するかのようにジッと俺の手元を見つめ瞬きさえも忘れている。
「はい」
一向に受け取らない美咲にもう一度声を掛け、俺は美咲の膝に置いて再び両手をポケットに入れた。
「…意味分かんない。何で翔が持ってんの?」
未だ理解出来ない美咲は俺に視線を向け戸惑いを隠せずにいる。
その視線とカチ合った時、俺はその視線から避け目の前に広がる海をぼんやりと見つめた。



