暫く沈黙が続いた。

音楽も何もかかっていない車内は静まり返って、美咲はボンヤリと窓の外を眺めていた。

その沈黙とは裏腹に俺の頭の中はこれから美咲に対する言葉が騒がしく流れ込んでいる。


「何処行くの?」


沈黙を破ったのは美咲で、俺はその言葉に頬を緩めた。


「ん?何処行きてぇ?」

「いや、とくにないけど…」

「んじゃ、ちょっと俺に付き合ってよ」

「うん。いいよ」


行き先は初めから決まっていた。

次第に見えてくる果てしない海が目の前に広がる。

駐車場に車を停めて、外に出た瞬間、俺は一息吐き空を仰いだ。


透き通った青々とした空を目にし、俺はゆっくり足を進めた。


「なんかやっぱ寒いな」


思ったよりも寒く、その海の冷たい風が頬を掠めた。


「…だね」


俺の後をついて来る美咲は小さくそう呟き、俺は着ていたジャケットを脱いだ。


「風邪引いたら困るし、…はいよ」

「え、いいよ。私は大丈夫だから」


肩に掛けたジャケットを美咲は慌てて手に掴んで俺へと返す。


「羽織っとけって」

「ごめん。…ありがと」


申し訳なさそうに呟く美咲はもう一度ジャケットを羽織り、その仕草に俺は頬を緩めた。

たどり着いた場所はいつもと同じ場所。

階段に腰を下ろすと、美咲も同じようにゆっくり腰を下ろした。


波の音が心地いい。

この心地いい波音に俺は何度、癒されただろう。